ハーバード大学が12000人以上を対象に、30年以上にわたって追跡した研究によると、家族や友人が幸せを感じていると、自分も幸せを感じる可能性が15%高まるという報告がある。

驚くべきことに、幸福は直接面識のない人にまで影響する。あなたの友達の友達を直接知らなくても、その友達の友達が幸せな人であれば、あなたの幸福度は10%高まる。

このハーバード大学による大規模な社会的実験によって、人の幸せは自分から数えて3人目まで影響することが分かっている。

具体的には、あなたの友達の友達、および友達の友達の友達の幸福度が高いと、あなたの幸福度は6%向上する。逆に、あなたが幸せだと、例えば、あなたの → 配偶者の → 同僚の → 家族(!)が幸福を感じる可能性が6%高まるということでもある。

「6%の幸福」は、決して小さなものではない。ハーバード大学の研究では、年収が1万ドル増えても幸福度は2%しか増加しない。幸せになりたければ、収入を増やすよりも、幸せな友人を引き寄せる方が遥かに効果的だ。そして、幸福な人を引き寄せる最良の方法は、人を幸福にすることだろう。

身近な人間関係は、私たちが想像するよりも遥かに大きな影響を及ぼし合い、拡散する。誰かを幸福にするように行動すれば、その効果はほぼ確実に自分を含む自分の大切な人たちにもれなく返ってくる。

周囲の人を幸せにする手助けをすれば、結果として、それは自分自身に対する最大の投資になる。「情けは人のためならず」は科学的に証明された事実ということだ。金融不安、世界経済の混乱を控えた不況期に最も有効な投資は、これに勝るものはない。

ニコラス・クリスタキス著『つながり』 講談社 (2010/7/22)

【樋口耕太郎】