陽射しがすこし柔らかくなったかな、と思ったら、また寒さがぶり返す。
いったん脱いだ衣服を、あわてて更に重ね着する…そんな季節柄から、旧暦の
二月は「衣更着(きさらぎ)」と呼ばれるようになったといいます。
でも今年の冬はとても暖かく、自然は、私たちの知らない所で着々と春の準備を
始めて、今や春になってしまったかのようです。
今日はバレンタインデー。気持ちも春色でお過ごしくださいね。

ずいぶん昔…、難病と闘うミコと、その恋人のマコの、激しくも悲しい恋愛を
綴った大島みち子さんの実話書簡集『愛と死を見つめて』が、ブームになり、
少し前に42年ぶりにテレビドラマとして蘇りました。
舞台となっている私の生まれた1960年代の日本は、普通の国の100年分くらいの
高度経済成長を遂げました。特殊な時代です。私の両親も、街や周囲がすごい
勢いで変化をしていく様に、当時すごく驚いた記憶があるようです。大人も
子どもも、輝かしい未来を信じて国民全員が全力疾走し生きている、そんな10年
だったそうです。ところがこの主人公の二人は、周囲の人々が先を夢見て生きる
中で、ミコの難病という現実を突きつけられ、掴めるはずだった明るい未来を
突然失ってしまいます。しかも、彼らの悲しみや悔しさを拾えるほど当時の
日本人に余裕はなかったので、周囲はどんどん先に走っていってしまう…。
ミコとマコは“置いていかれた側”です。でも、脇目もふらない速度で
走り続けた日本は、経済の成長と共に、何か大事なものをそこに置いてきて
しまったのではないのでしょうか。
愛し合う二人の愛は、純愛ですが、同時に“闘う愛”でもあると思うのです。
本気の恋愛とは、社会に対するレジスタンスと同義だと思います。
つまり、“愛よりも大切なものがある”という論理をかざしてくる
社会システムに、はっきりと“No”を言う。この二人の恋愛は、
1960年代という疾走するだけの時代に異論を突きつける行動だったのでは
ないか、と。二人は子どもだったけれど、その若さゆえのエモーショナルな
衝動には尊敬の念を私は抱きますし、これからの若い人たちにもそれを
感じてほしいし、あなたにもそんな本気の恋愛をしてほしいと思います。

「世の中、お金じゃない」
と言った時に、決まって返ってくるのが、
「じゃあ、お金なしで生きていけるの?」
という正論です。
でもじつは、「生きるのに必要なお金を稼ぐ」のと「お金儲けに走る」のとでは、
決定的な差があります。それは【コントロール欲求】に支配されているか
どうかということでもあります。この欲求が、多くの人を不幸にし、犠牲に
します。
たとえ金銭欲とは無縁の人々さえも、巻き込んでいくのです。
人も企業も、お金を儲けるために悪事を働くことがあります。人命を犠牲に
することさえあります。
本当は、企業が世の中の役に立つ活動をする資金を集める方法が株であり、
その活動を評価して買うのが株です。でも最近では、企業は実態なしにでも
株価を上げようとし、投資家は企業の活動内容と関係なく、利益の
得られそうな株を狙うマネーゲーム状態です。
すべてお金の魔力のせいです。年収が1500万円を超えると、かえって幸福感は
低下するという研究結果があるのに、なぜ人は必要以上にお金に
執着するのでしょうか?
そこにあるのがすなわち【コントロール欲求】のようなのです。
お金をパワーと感じ、お金があればすべてをコントロールできると
錯覚してしまうところから、際限なくお金を儲けようとするらしいのです。
人も自分も滅ぼすこともあります。決して健康な精神状態とは言えません。
企業も人間と同じように精神を病む場合があるのです。
現代はまさにそんな時代です。
それに立ち向えるのは、ミコとマコのような、また、自分より相手を大切に思う、
無償の愛情だけなのだと思います。

あなたの愛は生きていますか?
あなたの愛する人は誰ですか?
その人を本気で愛していますか?

誰もが愛し愛される大切な存在です。
あなたは愛し愛されるために生まれてきたのです。

今日は愛情あふれる一日をお過ごしくださいね。

【2007.2.14 末金典子】