少~しですがなにやら春の香りがしてまいりましたね~。
寒い2月もお元気に乗り切られたことと存じます。

私は滅多にテレビを観ることはないのですが、
随分前に、観たかった番組が終わってなんとなくテレビをそのまま
観続けていた時のこと。
何の番組だったかもう忘れましたが芸能人の出産を伝えていました。
夫妻の結婚式から始まって、妊娠中に海辺でたたずむシーンも盛り込んだ
ストーリー仕立てです。二人が迎えた生まれたばかりの赤ちゃんは可愛くて、
それはそれで微笑ましいものでしたが、「出産」が、そこにいたるプロセスも
含めて、いよいよ「究極の商品」になってきた、とも思うことができるような
内容でもありました。

今、モノがあまり売れていないそうです。
だから、「こどもの誕生」とか、その前段階の「恋愛」とか「結婚」とか、
ベタなプライバシーを夢仕立てのストーリーにしないと、広告で成り立っている
マスメディアももたないと言われています。
でも、人間の営みって、商品なのでしょうか。

もう他界した私の大正生まれのお祖母ちゃんの姉は、戦前の
「産めよ殖やせよ」時代の、大家族の長姉に生まれた人でした。
母親を早くに亡くした一家には、この大叔母の下に5人の弟妹がいて
(私のお祖母ちゃんもその一人)、彼女はごく当然のように
母親代わりとなって、生涯を独身で過ごしました。
沖縄でもこういう話を幾度か聞いたことがあります。

小さかった私の記憶に残っているのは、予告もなく、さぁ~と家にやってきて、
ジュースやらお菓子やら、食べ物やらお小遣いやらを置いて、また、さぁ~と
出かけていく姿です。「お茶でも」と引き留めても、腰もおろしません。
「次があるから」と、豆タンクのような体で、それぞれ家庭を持った弟妹達の家を、
順番に回っていくのです。

そのいつも明るい大叔母は、ほっぺたがりんごのようにつやつやとしていました。
気ままで、ちょっと自分勝手なところもある人だったので、その明るさは、
ムリして、とか、強がって、とかいうのではなかったようです。
いつも健康で、大正生まれらしくとてもモダンな人でもあり、海外旅行にだって
出かけていました。弟妹達にはいつも「私はいつも幸せやわ~」と楽しそうに
笑って言っていたそうです。

大叔母の好奇心の発露は、一人で出かける旅にありました。
そして、小さな旅を予定していた朝に、ぽっくりと亡くなりました。
傍らには、簡単な支度をまとめた旅行かばんがあったそうです。

大叔母の人生には、結婚、出産はおろか、恋愛なんていうものの欠片も
なかったように聞いています。マスメディアからの情報も、世の中の流行も、
まったく縁がありませんでした。でも、いつも元気で幸せな女性だったのです。

マスメディアと、それから新たに登場したネットメディアは、今日も毎瞬間、
「人生を充実させましょう」「そのためにこれをしましょう」と、
さまざまなメッセージを送ってきます。さすが商売だけあって、
「あなたの人生にはこれが欠けています」というメッセージを送られると、
つい惑わされそうになりますが、でも、それらはしょせん他人の欲望なのです。
だから、そういうものは、いったん、すべて無視したいものです。
普通に生まれて、普通に生きて、普通に楽しい。
そういう人生が、私達にはあらかじめ約束されていると思うのです。

明日は桃のお節句、おひな祭り。
女性の生き方や幸せについて想いを馳せたことでした。
いえ、男性も同じことかもしれませんね。
あなたにはあなただけの幸せが必ず用意されているはずです。
そのあなただけの幸せを、どうぞゆっくり、じっくりと生きてくださいね。

明日は麗王で、有機酒かすから作った手作りの白酒や、桜餅、
天使のえびと無添加いくらの手作り海鮮ちらしずし、無添加ひなあられ、
菜の花のおひたしなどで古式ゆかしくお祝いしようと思っています。
あなたもどうぞ御一緒くださいね。

【末金典子】