本日の沖縄タイムス社会面に、沖縄基地経済に関するインタビュー記事を掲載頂きました。冒頭のサーカスの子象の話は、私が学生に必ずする話です。 サーカスの象は巨大な身体と人並みはずれた力を持っています。少し力をかければ簡単に逃げ出すことができそうなちっぽけな杭に繋がれているのですが、それ を振りほどいて自由になろうとは決して考えないそうです。それは、生まれたばかりの小さな子象の時から杭に繋がれているからです。

心理学的には「学習性無力感」と呼ばれる現象で、現代社会に疲れた大人の姿、情熱を忘れた若者の姿、思考力と自立心を失った沖縄の姿に重なります。

私が学生に伝えたいメッセージは、自分の足を繋いでいるように見える鎖と杭は、子象の頃の記憶を根拠にした幻想に過ぎないということです。自分自身 を縛っているのは、自分が作り上げた記憶であり、その記憶に捉われている限り、現実を直視する力も、分析する思考力も、自分を変える行動力も生まれませ ん。

サーカスいちの巨体を誇る象は、物理的には(あるいは経済的には)大きな存在かもしれませんが、精神的にはちっぽけな子象用の檻に入って暮らしてい るのと変わりません。沖縄の基地経済の最大の問題は、経済でも、産業でも、金融でも、政治でも、軍事でもありません。心と勇気の問題です。

【樋口耕太郎】