随分ひんやりしてまいりましたね。先月まではまだ暑くて、窓を開けて眠っていて
泥棒に入られてしまった私も、防犯の意味だけではなく寒さのためもあって
今では窓をしっかり閉めて眠っております!

さて、その泥棒騒ぎの件では、みなさまからたくさんのお見舞いのお言葉や
麗王にわざわざいらしてくださっての励ましをいただき
本当にありがとうございました。
現金などは盗まれてしまいましたが、改めて自分にとっての財産とは何なのかを
考え、感じることができました。

この事件、私にとっては結構ショックな出来事でした。
「私が防犯を怠っていたからこうなったんだ」「普段の行いのいけないところが
こうしたことを招いたんだ」などと随分自分を責めたりもしました。
犯罪学でいうと、私のように泥棒に遭った人だけではなく、暴力を受けている人や
レイプに遭った人など犯罪に遭った人は一様に自分を責めるのだそうです。
それは「私にどうしてこんなにひどい事が起こったんだろう」というつらい心の
一つの落としどころとして「自分のせいで」と理由付けをするのだろうと
日本銀行の杉本支店長が教えてくださいました。なるほど。

一方、泥棒に入った犯人の方はというと、刑事さんのお話によると、
意外と罪の意識などはなく、一日に何軒も泥棒に入ったりして稼いでは
その日暮らしをしているのだとか。
こういう人は心理学でいう、つらいからという理由で簡単に仕事をやめてしまう
人達や麻薬や覚醒剤に溺れる人達に多い「快楽型人間」そのものです。
「快楽型人間」にとっては、努力は苦しみ以外の何ものでもなく、
努力のない人生こそが幸せな人生なのです。
でも人間は、努力なしではけっして幸せには生きられないのではないでしょうか?

こう考えていて、昔観た「トワイライト・ゾーン」のエピソードを思い出しました。
ドラマの主人公は、逃走中に殺された残酷な犯罪者です。彼は殺された直後、
ある天使に迎えられます。その天使は、彼のあらゆる願いを叶えるために、そこに
送られてきました。その男は、自分が天国にいることが信じられません。
犯罪者としての過去を忘れてはいないからです。でもすぐに、その幸運を受け入れ、
自分の願いを列挙しはじめます。
するとそれらは、すべて叶えられます。どんなに多くのお金を求めても、そんなに
ぜいたくな食べ物を求めても、すべて与えられます。美しい女性達を求めると、
彼女達が現れます。まさに、これ以上は望みえない生活に思われました。
ところが、彼はあるころから、何でも思い通りになるその生活に、喜びを
見いだせなくなります。努力不在の生活が、退屈でたまらなくなったのです。
そこで彼は、やりがいのある、挑戦的な仕事がほしいと天使に訴えます。
すると天使は、この場所では、ほしいものをなんでも与えられるが、ほしいものを
手に入れるために働く機会だけは例外だと答えます。
努力目標が何一つないまま、この犯罪者はイライラを募らせます。そしてやがて、
がまんが限界に達し、その場所を離れて「別の場所」に行きたいと訴えます。
つまり、この犯罪者は自分が天国にいるものと信じていて、そこがいやに
なったので地獄に行きたいと考えたのです。
ここでカメラが天使の顔を大映しにします。
天使の優美な顔が、いかにも邪悪そうな顔に変わります。そして、悪魔の不気味な
笑い声を上げながら、彼は言います。「ここが、その別の場所なのだよ。」

目標も、挑戦すべきことも、努力もない快楽主義的な人生は、私達をけっして
幸せにはしません。
私達は、谷間にいようと、頂上にいようと、くつろぐのではなく、より上を
目指すように作られているのだと思います。

人間は誰かに喜ばれるために生まれてきます。
そして喜ばれている自分を発見して成長する生き物です。
人間の成長は、もっと喜ばれる人になりたい、何をすれば喜ばれるだろうかと
考えることで生じます。
これからの時代は大変厳しくなることと思います。今までの常識も通用しません。
それでもどんな時代でも共通する生き方があります。
それは喜ばれている人間は常にどんな社会構造になっても必要とされるので、
喜ばれるために新しいことを考え、もっと何かができるだろうと考え行動すること
なのだと思います。
また誰かに喜ばれている人間の役割は、仕事の役割と同じです。
仕事の役割はお客さまに喜ばれることなのですから。
仕事の中にこそ実現する人生があり、だれかに喜ばれる自分をつくることこそ
人生なのです。
つまりは仕事をすることは自分の時間を誰かの喜びに変えることなのですね。
こう考えたら、先日の泥棒さんもなんだか気の毒な感じさえしてきました。

最後に、いやな事が起こった時、いつも私がいつも繰り返し唱える八木重吉さんの
「ゆるし」という詩を御紹介いたします。

神のごとくゆるしたい
ひとが投ぐるにくしみをむねにあたため
花のようになったらば神のまへにささげたい

与えられる物事の一つ一つを、ありがたく両手でいただき、
自分しか作ることのできない花束にして、笑顔で、神さまに捧げたいと
思っています。

さぁ、明後日の木曜日は今年のボジョレーヌーボーが解禁となる日です。
一生懸命働き、喜ばれているあなた御自身への御褒美に、今年の新しいワインを
プレゼントしてあげてくださいね。

(麗王では今年はJAL国際線ファーストクラスで唯一採用された
EUオーガニック認証ボジョレーヌーボーを御用意いたしております。
酸化防止剤は入っておりませんので安心してお召し上がりくださいね。)

【2012.11.13 末金典子】