春爛漫となり、沖縄県最大のショッピングモールもオープンするなど
なんだか気分華やぐ今日この頃ですね。
そしていよいよゴールデンウイーク! あなたは何か計画がおありでしょうか。

今日の麗王便りは少し長めになりますので、どうぞのんびり気分で
お読みくださいね。

いまから80年ほど前、ヨーロッパの一角に、人々の期待を一身に集めた
政治家が登場したことがあります。第一次世界大戦のあとの荒廃した世の中、
そこに米国で始まった世界恐慌がかさなって、街には物乞いとホームレスが
あふれ、誰もが、いつ自分がそうなるかとびくびくしながら暮らしていた時期です。

彼と彼の政党は言いました。
「貧困問題の解決は最優先課題である。人々に仕事がなく、
累計すれば数10億時間もが無為に浪費されているとは、
考えるだに恐ろしいことだ。若者たちよ、街に出て、困っている人たちのための
募金を始めよう。心ある人たちよ、食費を倹約し、募金に応じよう。
仕事のある人たちはサラリーの一部を寄付しよう。われわれも個人の資産と
零細農家と中小企業を守るため、最大限の努力をする。」

そろそろ自動車が普及し始めた時代でした。彼は言いました。
「クルマが金持ち階級のものであるうちは、国民を貧富の二つに
分裂させるものでしかない。この国を支えている真の国民大衆のための
クルマこそ文明の利器であり、すばらしい生活を約束してくれるものだ。
われわれは国民のためのクルマを開発しよう。」

こうスピーチした直後、彼は国産自動車会社を立ち上げ、高性能で安価な
乗用車の設計を進める一方、全国をカバーする高速自動車道路の
建設にも乗り出します。

さらに言いました。
「国民は国内外の旅行を楽しんだり、すばらしい音楽や映画やスポーツを
享受する権利がある。そういう余暇がなければ、明日を創造する労働意欲も
湧いてこない。」

そして実際、各地にリゾート地やスポーツ施設を次々に作っていきます。
また巨大な豪華クルーズ船3隻を建造し、多くの国民を格安の海外旅行に
送り出しました。実施にあたったのは7万人を超えるボランティアたちです。

不景気によって荒れ放題の山野についても、こう言っています。
「みんなで母なる自然を守ろう。針葉樹だけでなく、広葉樹も植えて、
豊かな森を再生させようではないか。野生動物の命を守るため、
その生活環境の茂みや雑木林を勝手に伐採すること、残忍なワナを
仕掛けて殺生することも禁止されなければならない。」

こうした政策はいまふうに言えば「弱者救済」「景気回復」「環境保護」です。
しかもそこにはクルマやスポーツや文化芸術の享受という、国民一人一人が
世の中の好転を実感できるような具体策も備わっています。
不景気に打ちのめされ、それまでの中央政府の無能ぶりに
苛立っていた人々は、やっと頼りになる政治家が現れた、と熱狂しました。
その熱狂的支持を追い風に、彼は権力への頂点へと登り詰めていきます。

さて、この指導者は誰なのでしょうか?

じつは彼こそ、20世紀最悪の政治家と言われるアドルフ・ヒトラーその人です。
ドイツ・ファシズムの立役者であり、600万人のユダヤ人と、ドイツ人であっても
政敵と見なした人物や心身障碍者などを次々にガス室に送り、
世界じゅうを第二次大戦に引きずり込んだ張本人です。
戦前の日本は彼と同盟を結び、敗戦のどん底へと転げ落ちていきました。

そういう悪行が明らかになった現代の目から見ると、当時のドイツ人たちが
どうしてあんな最悪の独裁者にコロッと騙されたのか不思議です。
でも、彼が国民の支持を集めていった1930年代の過程を時間順に
たどってみると、その秘密がよくわかります。

弱者救済は人々の心をとらえました。
景気回復はみんなが望んでいました。
環境保護の大切さは誰もが感じていました。
当初はドイツの地方都市で活動していた彼は、国民の心に響く
これらの政策をストレートに叫び、熱烈な支持を全国に
広げていったのでした。

政治って怖いなと思います。

昔のドイツ人たちが失敗したのは、ヒトラーの口当たりの良い政策に
熱狂したことでした。
我を忘れて興奮すると、政治を変えようというエネルギーを
すべて政治権力にからめとられてしみます。その結果、その指導者と
その政治手法に依存し、万歳することしかできなくなります。
そして、危険な人物に政治を乗っ取られた、と気づいた時は
もう手遅れでした。

琉球新報の金口木舌でも取り上げ書いておられた
心理学者フランク・パブロフの100万部のベストセラー「茶色の朝」は
こう始まります。

始まりは猫だった。茶色以外のペットを禁止する法律ができて、
主人公は白黒の飼い猫を処分した。友人も黒い犬を始末した。
法律に反対した新聞は廃刊になり、続いて本、ラジオ、酒、政党も
茶色以外は追放される。茶色が世の中をひたひたと支配していく。

違和感を覚えながらも、主人公は「流れに逆らわなければ安心だ。」
と思っていますが、やがて法律が変わり、過去の茶色以外の飼い主まで
国家反逆罪となります。「あの時、抵抗すべきだった」と悔やむ主人公に
なっていくのですがもう手遅れでした。

茶色はナチス初期の制服の色で、欧州ではファシズムの象徴です。
これは寓話ですが、私達に大きな警鐘を鳴らしてくれるように思うのです。

集団的自衛権の行使、憲法9条の骨抜き、武器輸出解禁、
自衛隊の全世界派遣…と歯止めが次々に外されていきます。
変だなと思いつつ、忙しいからとやり過ごしていると、
後戻りできなくなってしまいます。
東京でオリンピックだ~!と浮かれ騒いでいるうちに
なんだか国が変な方向に?なんてことになりかねません。
片や倒産、自殺、生活保護世帯の増加、犯罪などが
相次いでいるというこのチグハグさ。
こういう世相は世界史を読むと「ローマの崩壊」のところと酷似しています。
ローマの闘技場で、人間とライオンの死闘に熱狂しているうちに、
ローマは蛮族に打ち負かされてしまったのです。
歴史は繰り返すと言いますが、なぜか、今の日本を見ていると、
「ローマ興亡史」が目の前にちらつきます。
日本はまだ、国を失うという悲劇にあったことがありませんから、
国民は呑気ですが、歴史的に不幸にして国を失したことのある民族なら、
安閑とはしていないでしょう。

ではどうしたらよいのでしょうか?

哲学者の高橋哲哉氏は、誰もが持つ怠慢、臆病、自己保身、
無関心の積み重ねがファシズムを生むと指摘されています。
「思考停止をやめ、考え続けること。」と。
いやなことは考えない思考停止、不安だけどぬるま湯から出ない惰性、
誰かやってよという依存…。この国がはまり込んでしまった停滞現象から
「そろそろ目を覚ませ」と神が放った警鐘が
今の日本の政治かもしれません。

普段は忙しさでいっぱいいっぱいであっても、こんなちょっとまとまった
お休みの時にはじっくり世の中を考えてみたり、本をひも解いてみたり
ネットでいろいろ調べてみたりするのも大事なことだと思います。
そしてもちろんうんとうんと楽しんでくださいね。
どうぞ充実したゴールデンウイークを。

* 麗王はカレンダー通りの営業です。(日・祝祭日お休み)

【末金典子】

少~しですがなにやら春の香りがしてまいりましたね~。
寒い2月もお元気に乗り切られたことと存じます。

私は滅多にテレビを観ることはないのですが、
随分前に、観たかった番組が終わってなんとなくテレビをそのまま
観続けていた時のこと。
何の番組だったかもう忘れましたが芸能人の出産を伝えていました。
夫妻の結婚式から始まって、妊娠中に海辺でたたずむシーンも盛り込んだ
ストーリー仕立てです。二人が迎えた生まれたばかりの赤ちゃんは可愛くて、
それはそれで微笑ましいものでしたが、「出産」が、そこにいたるプロセスも
含めて、いよいよ「究極の商品」になってきた、とも思うことができるような
内容でもありました。

今、モノがあまり売れていないそうです。
だから、「こどもの誕生」とか、その前段階の「恋愛」とか「結婚」とか、
ベタなプライバシーを夢仕立てのストーリーにしないと、広告で成り立っている
マスメディアももたないと言われています。
でも、人間の営みって、商品なのでしょうか。

もう他界した私の大正生まれのお祖母ちゃんの姉は、戦前の
「産めよ殖やせよ」時代の、大家族の長姉に生まれた人でした。
母親を早くに亡くした一家には、この大叔母の下に5人の弟妹がいて
(私のお祖母ちゃんもその一人)、彼女はごく当然のように
母親代わりとなって、生涯を独身で過ごしました。
沖縄でもこういう話を幾度か聞いたことがあります。

小さかった私の記憶に残っているのは、予告もなく、さぁ~と家にやってきて、
ジュースやらお菓子やら、食べ物やらお小遣いやらを置いて、また、さぁ~と
出かけていく姿です。「お茶でも」と引き留めても、腰もおろしません。
「次があるから」と、豆タンクのような体で、それぞれ家庭を持った弟妹達の家を、
順番に回っていくのです。

そのいつも明るい大叔母は、ほっぺたがりんごのようにつやつやとしていました。
気ままで、ちょっと自分勝手なところもある人だったので、その明るさは、
ムリして、とか、強がって、とかいうのではなかったようです。
いつも健康で、大正生まれらしくとてもモダンな人でもあり、海外旅行にだって
出かけていました。弟妹達にはいつも「私はいつも幸せやわ~」と楽しそうに
笑って言っていたそうです。

大叔母の好奇心の発露は、一人で出かける旅にありました。
そして、小さな旅を予定していた朝に、ぽっくりと亡くなりました。
傍らには、簡単な支度をまとめた旅行かばんがあったそうです。

大叔母の人生には、結婚、出産はおろか、恋愛なんていうものの欠片も
なかったように聞いています。マスメディアからの情報も、世の中の流行も、
まったく縁がありませんでした。でも、いつも元気で幸せな女性だったのです。

マスメディアと、それから新たに登場したネットメディアは、今日も毎瞬間、
「人生を充実させましょう」「そのためにこれをしましょう」と、
さまざまなメッセージを送ってきます。さすが商売だけあって、
「あなたの人生にはこれが欠けています」というメッセージを送られると、
つい惑わされそうになりますが、でも、それらはしょせん他人の欲望なのです。
だから、そういうものは、いったん、すべて無視したいものです。
普通に生まれて、普通に生きて、普通に楽しい。
そういう人生が、私達にはあらかじめ約束されていると思うのです。

明日は桃のお節句、おひな祭り。
女性の生き方や幸せについて想いを馳せたことでした。
いえ、男性も同じことかもしれませんね。
あなたにはあなただけの幸せが必ず用意されているはずです。
そのあなただけの幸せを、どうぞゆっくり、じっくりと生きてくださいね。

明日は麗王で、有機酒かすから作った手作りの白酒や、桜餅、
天使のえびと無添加いくらの手作り海鮮ちらしずし、無添加ひなあられ、
菜の花のおひたしなどで古式ゆかしくお祝いしようと思っています。
あなたもどうぞ御一緒くださいね。

【末金典子】

さすがに2月ともなるとこの沖縄でも寒~い毎日が続いておりますね~!
カゼなど体調を崩しておられませんか?

この週末は寒さも吹き飛ばす心熱きバレンタインデーですよ~。
麗王は若い女性や男性のお客様も多くいらしてくださるのですが、
どの方にも彼氏彼女がいて今ラブラブかというと、意外にそうでもなく、よく
「出会いがないんです~」
「婚活中です~」
なんてお話になるのです。
特にバレンタインデーやクリスマスなどのイベントの時には
ちょっぴり淋しい想いも抱えて麗王にいらしてくださる方もいて、
そんな時に必ずお話するのが、
「恋愛をしていない時間も、大切にしてくださいね。」
ということ。

相手に届かない気持ち。
すれ違うお互いの気持ち。
どんなに想っていても、うまくいかない「恋愛」もありますね。

自信をなくして落ち込んだり、寂しさに戸惑うこともあるでしょう。
でも、そんな時だからこそ、持つことができる時間があります。

今まで、相手のことばかり考えていた毎日が、
自分のことを見つめる時間になる。
その時になって初めて、自分の弱さや、周りの優しさに気付くのです。

1つの恋愛を終えたばかりの人も、恋愛に後ろ向きになっている人も、
今が、あなたにとって大切な時。

自分自身と正面から向き合うことができる、素敵な時間なのです。

人は必ず同じレベルの人と愛し合う、と言われます。
高いレベルの人と愛し合いたかったら、自分も高いレベルの人にならなくては。
だからこそ、一人でいる時の時間が貴重なのです。
恋愛中はお互いのことに時間を取られてしまいますが、
一人の時なら時間は全部自分の物。
映画を観たり、本を読んだり、友達と楽しい会話をしたり、
美味しいお食事を楽しんだりと、自分磨きのために自分自身に
時間や労力やお金をどんどん投資し、毎日を楽しみましょう。
そうしているうちに、うつむきがちなオーラが消えて、
あなた自身が光りだし、素晴らしい相手があなたに気付いてくれるはずです。

週末のバレンタインデーに誰もいないという方はぜひ麗王で楽しいお酒とチョコを
御一緒に。
ラブラブだよ~、という方は心ほっこりの温かな一日をパートナーと御一緒に
幸せいっぱいにお過ごしくださいね。

【2015.2.12 末金典子】