私はいまだに政治にはそれほどの関心がないのですが、それでも沖縄とのご縁の中から、政治に関連する様々なコメントを求められることが増えてきまし た。私の発言は、右翼からは左翼だと解釈され、左翼からは右翼だと思われることが多いようで、何かを発信するたびに双方からご批判を受けます。同時に、 「樋口は右なのか、左なのか」と質問される方も多いので、私の見解を簡単にお伝えしようと思います。

私の考える左派、つまり真の意味での革新派は、政治観とは無関係です。おそらく世の中の1%以下(多分1万人に1人くらい)の比率で存在し、その一人一人のまったくパーソナルな生き方が、既存世界に新しいパラダイムを提供するイノベーターたちのことです。

例えば、ピカソ、ビートルズ、ジョブズ、ガンジー、ディズニー、ゲバラ、野茂英雄、マザーテレサ、佐藤初女・・・が私の思う左派です。

この人たちの共通点は、徹底的に「自分を生きている」ことでしょう。真に自分を生きていれば、社会が後からついてくるというか、居場所を探さなくても、自分の進むところがそのまま居場所になるというか、そんな現象が生まれるのだと思います。だから、左派として生きる人たちは、今の社会が自分を必要とするかどうかはあまり関係ありません。明日の社会が「その人なしではいられない」と感じるような自分を生きているからです。

沖縄は政治的に左と言われていますが、私に言わせれば、沖縄ほど左派が生まれにくい地域はなく、メディアに登場する一般的な左翼はどちらかといえば強固な現状維持派(つまり行動原理的には右派)でしょう。私には沖縄の99%以上は右派に見えます。政治論的な保守から見れば、沖縄の左翼が「問題」だ、ということになるのだと思いますが、私はむしろ、沖縄に(そして日本に)真の左派が存在しないことの方が問題だと思うのです。

明治維新は3000名の革命だったと言われているそうです。社会の大転換を図った志士たちのおおよその人数がそれです。その当時の日本の人口は約3000万人。社会の中で1万人に一人の割合で左派が息吹くと社会が生まれ変わるという法則があるのかもしれません。

沖縄の人口は約140万人。徹底的に自分を生きる140人がどのようにして覚醒に至るかが沖縄社会の将来を決めるのだと思います。

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The Crazy Ones

1997年、アップルに復帰したスティーブ・ジョブズが展開したキャンペーン広告、”The Crazy Ones”では、20世紀に活躍した「極左」たちを取り上げている。登場順にアルベルト・アインシュタイン、ボブ・ディラン、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、リチャード・ブランソン、ジョン・レノンとヨーコ・オノ、バックミンスター・フラー、トーマス・エジソン、モハメド・アリ、テッド・ターナー、マリア・カラス、マハトマ・ガンジー、アメリア・イアハート、アルフレッド・ヒッチコック、マーサ・グレアム、ジム・ヘンソン、フランク・ロイド・ライト、パブロ・ピカソ。