現在という時点は、ウォール街主導で世界に広まったグローバル金融と資本市場の枠組みが、量的・質的に大変容する前夜であるように思えます。恐らく20年先の未来から今を振り返ると、昨年7月以来世界金融の大問題になっているサブプライム危機が、その後の大変化の分岐点として語られるのではないでしょうか。変化の次に誕生する「オセロゲームのコーナー」、次世代金融市場の特徴を大胆にイメージしてみると:

①質が量に勝る影響力を持つようになるでしょう。市場シェア、資金量、事業規模、顧客ベースなどが事業的に有利になるとは限りません。

②資本市場から企業金融へ、金融プロフェッショナルから事業経営者へ、グローバル市場から金融の地産地消へ、株主からステイクホルダーへ、それぞれ金融機能と主導権が移行するでしょう。それらの結果、企業のステイタスであった株式上場や大都市の立派な本社が経営上のハンディキャップとなり、資本主導のM&A、事業の集積、フランチャイズ戦略などの拡大再生産事業モデルが非効率な経営選択と考えられるようになるでしょう。

③企業統治と情報開示が企業金融の最重要テーマとなるでしょう。ただし、既存資本主義・資本市場で議論されている「企業統治」「情報開示」の発想とは根本的に異質、かつ圧倒的に効率的なフレームワークが生まれ、低コストかつ容易に機能するようになるでしょう。

④「お金持ちのお金を更に増やす」という資本主義が社会的に影響力を失い、「人と社会を豊かにするためにいかにお金を使うか」、というテーマに対応する企業が、大量の資本と優秀な人材を容易に集めるようになるでしょう。企業経営者は、お金を増やすことに加えて、お金を(有効に)使うこと、を重要な経営課題としてステイクホルダーから求められることになるでしょう。

⑤そして、・・・この辺は誰に言っても笑われそうですが・・・、市場の大変化と次世代金融のフレームワークを前提としたとき、沖縄をベースとする金融事業は世界的に見ても極めて高い潜在力を秘めている、というのが本稿の仮説です。

一見突飛な次世代金融市場の世界観ですが、一定の論理的な根拠と合理性があります。次回以降、資本主義と金融・資本市場のメカニズムとその欠陥、サブプライム危機と今後の社会・経済・金融環境の大変動、この大変化に適応する次世代金融の青写真、そして、沖縄がなぜ次世代金融の中心になり得るかなど、トリニティのユニークな次世代金融論をご紹介します。

【2008.5.26 樋口耕太郎】