早いものでもう3月。少~しですがなにやら春の香りがしてまいりましたね~。
寒かった2月もお元気に乗り切られたことと存じます。
さて。
この春から始まる連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のモチーフとなり
急に話題の人となっている「しずこさん」こと大橋鎭子さん。
26歳の彼女が、敗戦の翌年の1946年に、銀座のビルの片隅で、
戦禍で荒れ果てた暮らしの復興に少しでも役立つようにと、
今でも売れ続けている雑誌「暮しの手帖」の前身である「スタイルブック」を
出しました。
「はげしい風のふく日に、その風のふく方へ、一心に息をつめて
歩いてゆくような、お互いに、生きてゆくのが命がけの
明け暮れがつづいています。せめて、その日日にちいさな、
かすかな灯りをともすことが出来たら……この本を作っていて、
考えるのはそのことでございました。」
(1948.9「美しい暮しの手帖」第1号あとがき)
当時の若い彼女の一文が胸に迫ります。「生きてゆくのが命がけ」なんて
今の世の中においてはヘンな表現ですが、とてもリアル。
人間として最低限の暮らしが脅かされている日々ということですね。
敗戦後の日本を生きのびる人々の苦しい息づかいが伝わってきます。
そんな疲れ果てた日本の時代にあっても、虐げられた女性を勇気づけ
鼓舞し続けた「しずこさん」。
「どんなに みじめな気持ちでいるときでも
つつましい おしゃれ心は失わないでいよう
かなしい明け暮れを過ごしているときこそ
きよらかな おしゃれ心に灯をつけよう
つつましい おしゃれは
あなたの心ににおう一束の青い花
あなたの夢に流れるとおい子守唄
そして あなたの日日を太陽へ翔らせる翼
お友だちよ 嘆くのはやめよう
私たちに青春のあるかぎり
私たちには希望がある」
(1946.6「スタイルブック」冒頭)
今の世は敗戦後ではないにしても、私達の暮らしを揺るがすように
吹きつけてくる風が日々強くなってきています。
そんな世にあって、美しくあること。おしゃれでいること。素敵を求めること。
全て大事であり、享受してゆきたい。
けれどそれらはとても壊れやすい形をしています。突風一つで吹き飛んで
しまいます。
だからこそ本物を探さねばなりません。テレビ・雑誌・ネットに溢れる広告的な、
雰囲気だけの「ステキ」は、きらびやかなものもシックなものもナチュラルと
されるものも、もうおなか一杯になりました。
本物の美しさとはもっと強靭なものです。優しさとは強いもの。
誰もが逆風を感じ始めているはずの今こそ改めてそれを求め、
見出したいものです。
自分の大切な人たちと営む「美しい暮し」を守り持続するためには、
時には風に向かわねばならないのではないでしょうか。
そのためにも敏感でありたい。そう思います。
暮らしが命がけになってしまう前に、その源を、本物を、見極める目や賢さ、
対峙する術、時代を乗り切る能力を身につけたい。
仲間や後輩や子供たちにそれらをきちんと伝えてゆきたい。
あさってのおひな祭りを前に女性の生き方や美しさについて
想いを馳せたことでした。
その「おひな祭り」。もともとはこの日に川で手足を洗って心身の穢れを祓い、
邪気を身代わりの人形に移し、川や海に流し、家族全員の厄を祓い、
夫婦円満を願うという行事だったそうですが、後に、親が女の子の成長の節目を
祝い、年中行事に寄せて女の子の将来の幸せを祈るものとなったそうです。
あさっては麗王で、酒かすから作った手作りの白酒や、桜餅、
無添加のえびといくらの手作り海鮮ちらしずし、無添加ひなあられ、
菜の花のおひたし、三重県産特大ハマグリの潮汁などで古式ゆかしく
お祝いしようと思っています。あなたもどうぞ御一緒くださいね。
【末金典子】
| 麗王だより 2016年
年末年始の夏日のような暖かさはどこへやら、1月の後半からは
沖縄本島で初のみぞれも降るなど冬らしく寒い日が続きましたね。
インフルエンザも流行っておりますが、あなたはお変わりございませんか。
明後日の日曜日はバレンタインデーですね。
バレンタインデーというと、若い女性のための恋のお祭り、という印象が強いかも
しれませんが、この日の歴史は古く、ルネッサンスのヨーロッパの宮廷では
紳士淑女が愛を記念して食卓を囲んだり、ゲームに興じていたという記録が
あります。由緒あるものなんですね~。
御存知のとおりバレンタインデーとチョコレートの結びつきは日本独自のものです。
面白いことに古い時代のヨーロッパではバレンタインデーには鳥料理を食卓に
出すのが宮廷での定番だったよう。仲睦まじい鳥のカップルにあやかろうと
したのだとされています。
2月14日頃に小鳥たちがつがいになるという伝承もあり、このあたりが
バレンタインデと-恋が結びつくきっかけになったのかもしれませんね。
さて。
私の好きな言葉に
「スコアボードではなく、グラウンドで行われている試合をしっかり見る」
というのがあります。結果やデータを知るのに一所懸命になるのではなく、
実際にそこで変化していること、そこで動いていること、そこで起きていることを、
よく観察するという意味です。
何でも簡単に知ることができる時代だからこそ、とても大事なことだと思います。
永六輔さんが以前こんなふうなエッセイを書かれていました。
通信簿をお母さんに見せたら
「これは学校の先生がお前を見ているのであって、私には関係ない」
と言って、一切見なかったそうです。
通信簿に表れない自分の息子の良さがあると思うお母さんの気持ち。
ちょっと極端だけど、とてもいいお話だなと思いました。
常々思い、麗王でも心がけていることは、
どんなことでも、よく見るということです。
よく見るということは、見つめるということ。
見つめるということは、隠れているいいところを見つけるということ。
人でも、モノでも、見えていることがすべてではありません。
自分のことを贔屓目に考えてみると目に見えないすてきなところや
自信のあるところ、いろいろな秘密もありますよね。そういうものは、
ぱっと見では見えませんもの。
いいところを見つけられたら、それは自分が第一発見者であり、
自分だけの「好き」になります。そういう「好き」は一生の宝ものです。
たとえば、人を好きになることも、見つけた宝ものがあってのことでしょう。
宝ものなんだから、自信を持って大好きになればいいのです。
このバレンタインデーを、大人の穏やかな愛を大好きなあの人に伝える、
いいきっかけにしてはと思います。
【末金典子】
| 麗王だより 2016年
1月も早や終わり、明後日はもう節分ですね。
節分というのは、平安時代の宮中儀式「追儺(ついな)」が始まりといわれていて、
この日は立春の前日で文字通り季節を分ける境目。
旧暦でいう大晦日なんです。それで前年の悪疫邪気払いの行事として
この「追儺」が行われていました。
では、なぜ「豆」を投げるのでしょう?
実は鬼の目「魔目」に豆を投げれば「魔滅」するからだとか。
じゃあ煎った豆でないといけないのはどうしてでしょう?
生の豆は芽が出てくるため、そこから鬼が芽を出という説や、
豆(魔目)を煎ることにより鬼を退治するという説もあるそうです。
つまり豆自体が鬼なので、外に投げ「鬼は外!」、あるいは
食べてやっつけろ!というわけですね。
そして節分が明けると立春。旧暦の新年です。
新しい年のエネルギーは一月ではなくて、二月の節分を越えたあたりに
動き始めるのだとか。つまり、節分を越えると、今年のエネルギーが非常に
はっきりしてきますので、今年の幸せに向かう目標や新しいトライは、
この頃にまっさらな気持ちで始めてみるのもいいかもしれませんね。
さて、作家の松浦弥太郎さんが、いつも通っておられる理容室のご主人に
こんなことを聞かれたそうです。
「お仕事でいつも心がけていることはありますか?」と。
なぜなら長年行きつけておられながらも、慣れることなく常に礼儀正しく、
さりげなくこまやかなお客さまへのあたたかい心配りに、
いつも感謝と感動で胸がいっぱいになっておられたからだそうです。
「そうですね。『添え手』という言葉がありますように、仕事はすべて
その心持ちです。」と、ご主人は微笑みながら答えてくださったそうです。
何をするにも、必ず手をやさしく添えて、次の動作なり行いを相手に知らせる
ひと手間をかける。また、手をそっと添えていることで、何があってもすぐに
助けることができる心づもりとでも言いましょうか。
見えなくともその先にいつでも生身の人がいることを忘れずに、
単なるていねいさだけではなく、相手をおもんぱかった振る舞いと、
少し先を読んだやさしさこそが、どんな仕事においても大事であると、
ご主人は教えてくださったということです。
私の仕事は、あなたが麗王にいらしてくださった時に、たのしく、
幸せな心持ちで、笑顔で溢れた時を過ごすことができるように
心を尽くすことです。
この「麗王便り」も大切な人へ一か月に一度か二度お手紙を綴るように、
人を想う愛情という心を精一杯働かせて書いているつもりです。
そして、理容室の御主人のように、「添え手」という言葉をお守りにして、
あなたへ手を添えることを決して忘れずに、仕事という日々を過ごしていきたい、
新しい節目に改めて自分に言い聞かせました。
水曜日はあなたも大きな声で豆をまいて。
「鬼は~外、福は~内!」
複雑な課題の多い今日この頃、厄払いはしっかりとしたいものです。
私も邪気を払うべく、もっと元気になるべく豆を今までより少し多めに撒き、
しっかりと数え歳プラス1個のお豆をいただくことにいたします。
そして今年の恵方の南南東に向かって、幸運をおいしく呼び込む
恵方巻き寿司をガブリ!とまるかぶりするぞ~!
あなたと私の今年一年の幸せを心から願って。
* 麗王でも水曜日は「無添加恵方巻」を御用意いたしておりますよ~。
【末金典子】
| 麗王だより 2016年